令和元年第2回吉田町議会定例会は、平成31年4月21日執行の統一地方選挙後、最初の議会定例会でございますので、今議会定例会の開会に臨み、今後の町政運営についての所信を述べさせていただきます。

 4月30日をもって「平成」の御代が幕を閉じ、5月1日から新たに「令和」の御代が幕を開けました。振り返ってみますと、「平成」は、地方自治体にとって大きな変革の時代でありました。

 その一番のターニングポイントは「地方分権一括法」の成立です。平成11年7月に「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」、いわゆる「地方分権一括法」が成立したことにより「機関委任事務」が廃止され、いずれも地方公共団体の事務と位置づける「法定受託事務」と「自治事務」に再編成されました。

 さらに、第1次から第8次にわたる地方分権一括法を受けて、平成23年5月以降、市区町村に対する義務付け・枠付けの見直しが行われ、それまで国が一律に定めていた各種基準や資格を地方自治体が条例により定め、地域の実情を踏まえた独自の基準等の設定による政策立案が求められることとなったほか、権限の移譲により、国と地方で分担していた一連の事務を地方が一元的に実施し、様々な施策を一体的に管理・運営することも求められるようになりました。

 こうした地方分権改革の進展に伴い、地方自治体には、地域の実情に合った政策を自らが考え、自らの意思で決定し、自らが責任を取る行政運営が求められることとなり、それぞれが独自の政策を打ち出して競い合う都市間競争が繰り広げられるようになりました。そしてさらに、人口減少や少子高齢化の進行がこの都市間競争に拍車をかけ、それぞれの自治体が生き残りを賭けて激しく競い合う時代に突入したのです。

 私が町政運営を担わせていただくこれからの4年間においては、人口減少や少子高齢化の進行がさらに加速する中で都市間競争もより一層激しさを増し、自治体間の格差がこれまで以上にはっきりと現れてくることが予想されます。私は、当町がこの非常に厳しい時代の中でも力強く歩んでいけるよう、職員一人ひとりの政策立案能力を高め、役場が政策官庁として地域づくりの主体となり、多くの皆さまに選ばれる活気に満ちた魅力あふれるまちを創り上げるべく、全身全霊をかけて町政運営に取り組んでまいる所存でございます。

 それでは、今後の町政運営につきましてご説明申し上げたいと存じます。

 議員の皆さまもご承知のとおり、今回の町長選挙は残念ながら無投票となり、私としては大変不本意な結果でございましたが、私は、今回の選挙に臨むに当たり、5つの柱から成る公約を掲げさせていただいておりました。その5つの柱とは、「シーガーデンシティ構想の具現化」、「都市基盤の整備」、「産業の振興」、「福祉社会の建設」及び「教育環境の整備」でございますので、このマニフェストに沿い、今後の町政運営につきましてご説明申し上げます。

 はじめに、5つの柱の1つ目の「シーガーデンシティ構想の具現化」についてでございます。

 当町では、東日本大震災以降、失われた安全・安心を取り戻すべく「津波防災まちづくり」を強力に推し進めるとともに、安全・安心と賑わいづくりを一体的に進める「シーガーデンシティ構想」の具現化にも着手してまいりましたが、今後4年間につきましても「新たな安全の創出」と「新たな賑わいの創出」とを同時に進める取組を一層加速させ、実現に向けて努力してまいります。

 「新たな安全の創出」に係る最重要施策であります防潮堤の整備についてでございますが、川尻工区につきましては、この4年の間に、大井川河口の河川防災ステーションや大井川堤防なども含めた一体的な整備を完了させ、実際に新たな賑わいを生み出せるような段階まで取組を進めてまいりたいと考えております。

 一方の住吉工区につきましては、早期に事業着手していただけるよう、引き続き、国に対し強力に働き掛け、この4年間で、具体的な整備を始められる段階まで歩みを進めてまいりたいと考えております。

 「新たな賑わいの創出」を担う施設であります吉田漁港多目的広場につきましては、川尻工区の防潮堤との接続が円滑に行われるよう調整を図ってまいりますとともに、吉田漁港多目的広場利活用検討委員会及び吉田町シーガーデンシティ構想推進委員会の皆さまのご意見も十分に踏まえながら、海岸や景観などといった資源を最大限に活用し多くの皆さまに訪れていただける魅力あふれる施設となりますよう、民間との連携も念頭に置いた整備を進めてまいります。

 さらに、シーガーデンシティ構想における賑わいづくりの先行的な取組として、展望台小山城に併設しております小山城売店をリニューアルし、改装後は「しらすのまどぐち」をコンセプトに、しらすを中心とした特産品の販売や町の情報発信などを行うPR拠点として運営してまいりたいと考えております。

 続きまして、5つの柱の2つ目の「都市基盤の整備」についてでございます。

 当町では、東日本大震災以降、「津波防災まちづくり」による防災対策に取り組んでいく中で道路網などの都市基盤整備を着実に進め、交流人口の拡大など新たな賑わいの創出につなげてまいりました。しかしながら、更なる都市基盤整備に向けて取り組んでいかなくてはならない課題として残っているものが、大幡川幹線の道路改良事業でございます。

 この大幡川幹線の道路改良事業を着実に進め、主要地方道吉田大東線から東名高速道路までの約1キロメートルの区間が開通いたしますと、大井川に架かるはばたき橋の袂へとつながり、交流人口の拡大や更なる賑わいの創出にも寄与するものと考えておりますので、引き続き、早期の事業着手に向け、地元の皆さまとの意見交換や関係機関との調整を進めてまいります。

 また、シーガーデンシティ構想における賑わいづくりとあいまって交流人口の拡大も目指していく中で、吉田インターチェンジ周辺の整備は大きな課題であると認識しておりますので、地域住民の皆さまのご意見も取り入れながら、特に、鉄道の駅や空港からのアクセスという点において利便性を向上させるような拠点整備に取り組んでまいりたいと考えております。

 続きまして、5つの柱の3つ目の「産業の振興」についてでございます。

 シーガーデンシティ構想の具現化に伴う新たな賑わいづくりが進んでまいりますと、水産業や農業、既存の企業との連携や新たな商品開発などの可能性も大いに膨らんでまいりますので、今後は、新たな動きを喚起し、多角的な活動が展開されるような仕掛けづくりにも取り組み、産業の振興につなげてまいりたいと考えております。

 また、新たな賑わいが生まれてくる中で起業や創業に関する支援も一層充実させ、当町をさらに豊かで勢いがあるまちへ発展させてまいりたいと考えております。

 続きまして、5つの柱の4つ目の「福祉社会の建設」についてでございます。

 冒頭にも申し上げましたとおり、人口減少や少子高齢化は今後も確実に進んでまいりますが、そのような時代においても、誰もが安心して健やかに暮らせる社会の構築を目指し、引き続き、高齢者福祉や健康づくり、子育て支援に係るサービスを充実させていく必要があると考えております。

 私は、高齢化の進行に伴い、移動に困難を感じる「交通弱者」といわれる方々が今後増えていくのではないかと推察しております。このため、本年度から、新たな公共交通システムの構築に向けた調査を開始し、町民の皆さまのご意見、ご要望も十分に踏まえながら、誰もが快適に町内を移動することができる公共交通システムの構築を目指してまいります。

 一方、年々高齢化が進む当町においても、まだまだ元気な高齢者の皆さまは大勢いらっしゃいますので、このような元気な高齢者の皆さまが長年培ってきた豊富な知識や経験をもとに、地域において幅広くご活躍いただけますよう、イベント等を通じた社会参加の促進や、ボランティア活動に関する相談窓口の設置など、アクティブシニアの皆さまの余暇活動を推進する事業にも取り組んでまいりたいと考えております。

 さらには、高齢者の皆さまの健康づくりや体力づくりに対する意欲を高め、運動習慣を定着させることにより、日頃の運動不足の解消や筋力低下の防止を図るとともに、心身の健康や生きがいづくりにつながるよう、高齢者の皆さまが楽しみながら気軽に運動に取り組むことができる高齢者スポーツ教室の開設についても検討してまいりたいと考えております。

 子育て支援に係るサービスの一つであります放課後児童クラブにつきましては、各小学校区に1棟ずつ施設を増築し、入所要件の緩和にも対応できる児童の受け入れ体制が整いましたので、今後は、運営面の充実を図り、きめ細かな対応に努めてまいりたいと考えております。

 最後に、5つの柱の5つ目の「教育環境の整備」についてでございます。

 子どもたちは吉田の宝であり、未来を担う子どもたちが複雑多様な社会の中で力強く生きていくために必要な資質・能力を身に付けられるよう、安心して質の高い教育を受けられる環境を整備することが私の使命であると思っておりますので、引き続き、「吉田町教育元気物語 TCP Triwins Plan」に掲げた施策を中心に教育環境の整備に尽力してまいります。

 小中学校の体育館につきましては、教育活動の拠点であると同時に、有事の際には町民の皆さまが避難生活を送る指定避難所にも位置づけておりますことから、子どもたちの教育環境をさらに向上させるとともに、有事の際には、町民の皆さまが少しでも快適な環境のもとで過ごすことができますよう、本年度中にエアコンを設置いたします。

 また、総合体育館につきましても、健康づくり、体力づくりの拠点として多くの皆さまにご利用いただいており、小中学校の体育館同様、有事の際の指定避難所にも位置づけておりますので、来年度以降のエアコン設置に向け、本年度は、空調設備設置に係る実施設計業務委託を実施いたします。

 教育活動に関する施策といたしましては、新学習指導要領において、アクティブラーニングを取り入れた授業改善やプログラミング教育の展開が求められておりますので、これらが円滑に行われるよう、ICT機器の充実を図ってまいります。

 また、補充学習の充実や子どもたちの居場所づくりに係る施策といたしましては、これまで実施してまいりました公設学習塾や放課後補充学習に加え、夏休みを利用した町主催のサマースクールの開設につきましても、教育委員会と意識を共有しながら検討してまいりたいと考えております。

 以上、新たに4年の任期を迎え、5つの柱から成る私のマニフェストに沿い、今後の町政運営に対する私の考えを述べさせていただきました。

 地方分権改革の進展や住民ニーズの多様化による行政需要の増大等に加え、人口減少・少子高齢化も急速に進み、当町を取り巻く環境は一層厳しさを増してまいりますが、当町が明るい未来に向かって絶えず進化し続け、皆さまに選んでいただける魅力あふれるまちとなりますよう、5つの柱から成る私のマニフェストの実現に向け、町政運営に全精力を傾注してまいる所存でございます。

 議員各位におかれましても、当町が置かれている非常に厳しい状況をご理解いただきますとともに、「豊かで勢いがあり、心を魅了する」まちづくりに対しまして多大なるご支援を賜りますよう切にお願い申し上げ、所信表明といたします。