2015年6月2日 作成

平成27年第2回吉田町議会定例会(平成27年6月2日開会)所信表明

 平成27年第2回吉田町議会定例会は、4月26日執行の統一地方選挙後、最初の議会定例会でございますので、今議会定例会の開会に臨み、今後の町政運営についての所信を述べさせていただきます。
 第18回統一地方選挙の後半戦に当たる4月26日の選挙は、当町では16年ぶりとなる町長選挙及び町議会議員選挙のダブル選挙でございました。総務省によりますと町村長選は全体の43.4%に当たる53町村が無投票となり、また、町村議選は89町村の930人、総定数に占める割合で21.8%が無投票で当選したとのことでございます。全国的に候補者が定数を上回らず無投票となる自治体が多くなっている状況から、住民の代表を投票で選ぶ機会が失われる事態を懸念する報道が多くなっております。一方で、行政への関心そのものが低くなっていることに加え、出馬のためには現在の職を辞する必要がある場合や議員報酬だけでは生計維持が困難なことなど、出馬を阻害する要因も指摘されており、幅広い人材の参入を可能にする環境整備も求められております。
このような情勢の中、当町におきましては、首長及び議会議員ともに定員を上回る立候補者が有り、大変喜ばしく感じた次第でございますが、町民の皆さまに行政に対する関心を高めていただくためには、首長と議会の活動が町民の皆さまに認知されることが重要であると考えております。
「役場はサービス業である」が私の持論でございますので、町民の皆さまの目線に立ち、町民の皆さまの都合に合わせた行政サービスの提供に心掛け、引き続き町民の皆さまに信頼され、喜ばれる役場づくりに徹してまいります。
議員各位におかれましては、昨年度制定されました吉田町議会基本条例前文に定める「常に町民福祉の向上と町の発展を第一義とした最良の意思決定」を行うため、町民の皆さまへの情報提供及び町民の皆さまとの意見交換を活発に行い、その前提に立って議員相互の徹底した議論を十分に尽くしていただきますよう期待しております。
それでは、今回、町長選挙に臨むに当たり、4つの柱から成るマニフェストを選挙公報でお示ししておりますので、このマニフェストに沿いまして、本年度の事業を中心に、今後の町政運営につきましてご説明申し上げます。
町民の皆さまにお約束いたしました4つの柱の1つ目は、町が強力に進めております「津波防災まちづくり」でございます。
はじめに、海岸における「津波防災まちづくり」についてでございますが、L2クラスの津波被害に備えるための防災対策につきましては、新たな賑わいづくりとの両立を目指し、間もなくまとまる予定であります国主催の駿河海岸整備検討会の検討結果に沿って、国・県と協力して海浜回廊を整備してまいります。
吉田漁港及びその周辺における津波被害を軽減させる対策としましては、既存の漁港施設である防波堤などと海岸保全施設である胸壁との多重防御により、津波から水産関連施設や漁港背後地の財産・生産活動を守るための整備を進めてまいります。
具体的には、漁港内の静穏度を高めるために設置されている東防波堤、西防波堤及び内防波堤の3つの防波堤を粘り強い構造に強化するとともに漁港東側の国有地に防潮堤の役割も担う水産振興を図るための多目的広場を整備してまいります。
防波堤につきましては、本年度に津波シミュレーションと津波安定照査を実施し、来年度以降には粘り強い構造にするための設計業務や工事に着手していく計画でおり、海浜回廊の一部となる多目的広場につきましては、本年度、測量、地質調査及び設計業務を行い、来年度からは工事に着手し、早期完成を目指してまいります。
また、県の管理する二級河川坂口谷川への水門設置につきましては、現在、当町と牧之原市とで坂口谷川水門建設促進期成同盟会を組織し、水門建設及び堤防整備の促進を図ることを目的として活動しておりますので、今後一層、静岡県に対する水門の設置要望を強めてまいります。
当町の「津波防災まちづくり」の一丁目一番地ともいうべき財産・生産活動を守る対策は、吉田漁港を含む海岸線における備えの充実でございますので、地域住民の皆さまの安全・安心を確保できるよう一日でも早い完成を目指して取り組んでまいります。
次に、都市防災総合推進事業に関連する富士見幹線及び住吉幹線の整備についてでございます。
富士見幹線につきましては、主要地方道島田吉田線バイパスとの交差点付近及び大幡川幹線との交差点付近の道路改良工事及び仕上げの舗装工事を行いまして、本年度末には、主要地方道島田吉田線バイパスから大幡川幹線までの区間を完成させる予定であり、隣接する防災公園につきましても本年度末の完成を目指して、引き続き工事を進めてまいります。
また、住吉幹線につきましては、地権者の皆さまにご理解をいただくことができましたことから、全線開通に向け、本年度末までに工事を完了させるよう努めてまいります。
そのほか、避難路として整備を進めております町道西の坪大浜1号線、下片岡16号線及び青柳田中1号線につきましても、昨年度、地権者の皆さまにご理解いただきましたことから、本年度末までに事業を完了させる予定でございます。
続きまして、4つの柱の2つ目の「賑わいづくり」につきましてご説明申し上げます。
津波防災まちづくりと併せて整備する多目的広場につきましては、シーガーデンシティ構想の核の一つである海浜回廊の一部となる施設であり、防災機能を有するだけでなく、漁港の特性を生かし、町の特産品であるシラスなどを活用した事業を展開することで、継続的な水産業の振興を図ってまいりたいと考えております。
海浜回廊につきましては、はじめに、吉田公園からこの多目的広場までの間について整備を進めてまいりますが、この場所の特性としましては、駿河湾や富士山、伊豆半島などの自然景観が一望できるだけでなく、静岡空港に着陸する飛行機の迫力ある音と姿を間近で体感できることであります。また、この場所への重要なアクセス道路となる東名川尻幹線につきましては、本年度末までに全区間の整備が完了する予定でございます。
東名川尻幹線の全線開通により、富士山静岡空港や東名吉田インターチェンジと海岸部との距離が縮まることから、この海浜回廊は、新たな賑わいの場の創出には最適な場所であると確信しておりますので、より多くの人を当町に呼び込むことができるよう産業界とも連携し、事業を展開してまいります。
続きまして、4つの柱の3つ目の「福祉社会の建設」についてでございますが、この「福祉社会の建設」につきましては、さらに「生みやすく、育てやすい環境の整備」、「健康を維持しやすく、社会に参加しやすい環境の整備」及び「悩みを打ち明けやすく、手を差し伸べやすい環境の整備」の3つのテーマに分けておりますので、はじめに、「生みやすく、育てやすい環境の整備」につきましてご説明申し上げます。
子どもを「生みやすく、育てやすい環境の整備」につきましては、特に妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を行うため、母子保健サービスの充実を図ってまいりますが、既に4月から、新規事業としまして「7か月児健康相談」と助産師による「妊婦、産婦健康相談」を開始いたしました。
月1回実施する7か月児健康相談では、お子様の成長、発達状況にあった保健指導、健康相談はもとより、予防接種の進め方や、離乳食の進め方、図書館司書によるブックスタートも取り入れ、育児に対する不安や心配が大きいこの時期の支援をきめ細かく行い、安心して育児ができるようサポートしてまいります。
助産師による妊婦、産婦健康相談につきましては、妊娠、出産に対し、より専門性の高い助産師が対応することにより、必要な支援を切れ目なく行っていける体制を整備してまいります。
また、お子様だけではなく、出産後2か月から4か月までの間の母親の心身を癒し、より良い育児ができるよう、専門職による母親支援のための教室を新たに実施してまいります。産後の心と体、生活環境が大きく変化し、母親に大きな負担がかかるこの時期に、尊い仕事である育児に日々取り組んでいる母親がよりいきいきと健康でいられるよう支援してまいります。
そのほか、特定不妊治療費助成事業につきましては、これまでの助成実績を分析し、本年度から助成の上限を1回につき15万円から30万円まで引き上げており、この引き上げた助成額の範囲内で、男性不妊治療に関しましても助成対象としております。
さらに、子育て支援の拠点の一つとなる保健センターにつきましても、お子様連れの母親が来所しやすいよう、また、落ち着いた環境で相談することができるよう、母子保健室の設置及びトイレの改修等の事業を進めているところでございますが、母子保健サービスの充実のため、様々な形で妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を実施してまいります。
次に、子ども子育て支援事業についてでございます。
近年の子育てにおきましては、子育て世帯の核家族化に加え、女性の就労拡大等社会参加が増大する中、児童が家庭で保護者と接する時間も限られ、家庭教育の機会が減少することが考えられます。
このように家庭環境が変化する中、保育園における保育事業及び放課後児童クラブの学童保育事業は、就労と育児の両立を支援する機能として保護者の期待も大きいものと考えておりますので、新たに保育園において幼児期教育を施すことで、保育園を育児と教育の二つの機能を併せ持つ特色ある子育て支援施設として充実を図ってまいります。
現在、保育士による教育カリキュラムを策定中であり、今後計画的に実施していく予定でございます。
また、核家族化、地域コミュニティの希薄化等により子育てに悩みや不安感を抱く方のために、昨年度から子育て相談員を置くようにいたしました。本年度からは、より利用しやすい環境づくりのため相談場所を役場から地域子育て支援センターに移しており、土曜日及び日曜日にも地域子育て支援センターを開所して保護者の多様な就労状況にも対応できるように努めております。
昨年完成したすみれ保育園におきましては、就労状況が一定でない保護者の方やリフレッシュが必要な保護者の方などを対象とした幼児の一時預かり事業を実施しておりますが、昨年度の1年間で延べ1,423人、平均しますと一日当たり6人の利用がございました。この実績から、就労状況が一定でない保護者の方などのニーズに少なからず応えることができたものと受け止めておりますが、さらに、本年度からは、急な用事により、1時間ないし2時間程度の利用を必要とされる方に対し、すみれ保育園に併設する地域子育て支援センターにおきまして、緊急一時預かりを開始いたしました。
また、これらの一時預かりが就学前の幼児を対象にしているものであることから、小学生の緊急的な預かりニーズに対しましては、中央第2放課後児童クラブにおきまして、一時的な受け入れを行うようにいたしました。
今後は、乳幼児や小学生等の児童を有し、地域において児童の預かり援助を受けることを希望する方と援助を行うことを希望する方との相互援助活動に関する連絡、調整を行うファミリーサポートセンターの早期の立ち上げを目指してまいります。
次に、「健康を維持しやすく、社会に参加しやすい環境の整備」についてでございますが、いつまでもいきいきと健康で生活してくためには、中高年期からの生活習慣が重要となります。また、認知症を予防するためには、高血圧、糖尿病といった生活習慣病を予防することや生活習慣病を適切に治療することが必要であることもわかってまいりました。
そこで、これまで進めてきた健康づくり事業「若返り貯筋塾」の内容を見直し、本年度は、若い世代のうちから生活習慣を改善し、生活習慣病を予防するとともに、脳を活発に使う生活を心掛けることが認知症予防に繋がることを学習できる事業内容にしていきたいと考えております。
6月からは、運動を継続して行いながら、脳を使う生活習慣を身に着けることを目的に「ストックウォーキング教室」を開始いたしますが、ストックウォーキングを通じての運動の実践に加え健康講話を行い、今後のより良い生活習慣を獲得できるきっかけづくりにしていただきたいと考えております。
様々な健康づくり事業や広報等を通じ、介護予防は、生活習慣病予防からスタートしているということを積極的に普及、啓発し、健康寿命の延伸を目指してまいります。
また、生涯学習につきましては、より多くの町民の皆さまがいつでも学習できる環境が整っていることが重要であることから、本年2月に耐震補強が完了した吉田町中央公民館における講座等の充実に努めてまいります。
その一環としまして、生涯にわたる学習をより一層推進するため、高齢者を対象とした「寿大学」を2年制とし、多様なカリキュラムを備えた学習機会の拡大を図ってまいりますが、高齢者の居場所づくりや生きがいづくりを行い、充実した生活を送ることのできる環境を整備するだけでなく、地域活動を担う人材を養成し、地域の教育力向上につなげたいと考えております。
教育委員会が推進している地域ぐるみで子どもを育む「地域教育推進事業」とコラボレートし、寿大学卒業生が、各地域で活躍していただくことが可能となれば、さらなる町の教育力の向上が図られるものと期待しております。
そのほか、本年4月に開設した高齢者人材活用センターでは、生涯現役人材バンク事業「いきいきボランティア倶楽部」を6月から開始するため、現在、準備を進めております。
「いきいきボランティア倶楽部」は、高齢者の皆さまが長年培ってきた豊富な知識や経験、技能を地域の貴重な財産として、バンクに登録していただき、そのお力を必要としている町民や地域団体とを結びつけ、そこで高齢者の皆さまがボランティアとして地域で活躍していただく事業でございます。
「いきいきボランティア倶楽部」には、介護予防教室などの講師、野菜づくりや庭園づくりなどの指導、コーラス、詩吟、着付けなどの指導、傾聴ボランティアなど幅広い分野でボランティアとして活動していただき、高齢者の皆さまが生きがいを持って地域社会に参加することができるよう新たな基盤を創出してまいります。
 次に、「悩みを打ち明けやすく、手を差し伸べやすい環境の整備」についてでございます。
 本年4月1日現在における当町の高齢化率は、22.72%であり、右肩上がりに上昇しております。今後も、ひとり暮らし高齢者が増加していくことが見込まれる中、高齢者の皆さまが気軽に集い、昼食を食べたり、お茶やコーヒーを飲みながら有意義に語れるような空間を創出するため、空き家等を有効活用し、高齢者の居場所作りと日中独居対策としての見守りを兼ねた「高齢者いきいきカフェ」を開設してまいりたいと考えております。
また、人との繋がりが希薄化している現代社会においては、ひとり暮らし高齢者をはじめとして、身近に話を聞いてくれる人がいないなどの理由により、生活上の悩みや不安、寂しさを抱えている方が増加しており、人の思いや気持ちに耳を傾け、共感する傾聴ボランティアの需要が年々高まっております。
高齢者の皆さまが悩みを打ち明けやすく、手を差し伸べやすい環境の整備を図るためにも、既存の傾聴ボランティア派遣に加え、「いきいきボランティア倶楽部」からも傾聴ボランティアの派遣を行い、高齢者のニーズを丁寧に聞かせていただくことで、必要な福祉サービスに繋げられるような仕組みを構築してまいりたいと考えております。
 最後に、4つの柱の4つ目の「教育環境の整備」につきましてご説明申し上げます。
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が一部改正され、平成27年4月1日から施行されました。この改正では、教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保しつつ、首長の教育行政への関与が認められるようになり、すべての地方公共団体に「総合教育会議」が設けられたほか、首長には、教育の大綱策定が義務付けらましたが、この新体制の下、地域教育の課題やあるべき姿を教育委員会と共有し、教育行政の推進を図ってまいります。
はじめに、小・中学校の一貫教育についてでございますが、当町は3小学校に対し中学校は1校だけであり、3小学校のほとんどの児童が吉田中学校に入学するという実態がございます。このことは、9年間を見越した教育の実施をしやすい利点となりますので、こうした地域の実情を考えますと、この4校の連携により、効率的、効果的な施策が打ち出せると考えております。
加えて、保育園や幼稚園における教育が充実し、さらに保育園、幼稚園と小中学校とが連携し「子育て」と「教育」の融合をさせることができれば、相乗効果が生まれ、この町の未来を託す子どもたちを豊かに育む体制がより強化されるものと考えております。
さらに、子どもたちがより学習に専念できるようにするためには、教育環境の充実を図る必要がございますので、エアコンの設置など教育施設の整備を計画的に実行し、子どもたちが学習しやすく、ひとりひとりの個性を伸ばせるような教育環境を提供してまいります。
充実した教育環境を提供していくことにより、この町に住みたい、この町の教育を受けさせたいと思う方が増えるよう総合教育会議の場において、教育委員会と協議・調整を行い、教育政策の方向性を共有し、この町の未来につながる教育施策の方向性を定めてまいりたいと考えております。
以上、新たに4年の任期を迎え、選挙公報でお示しした4つの柱からなるマニフェストにつきまして、本年度の事業を中心に今後の町政運営に対する私の考えを述べさせていただきました。
私は、平成15年4月に当選したときから「町長は無色、公共事業は透明でわかりやすく、町民と役場は風通し良く、弱者に対しては日当たりの良い町政」をスローガンとしておりますが、この4年間につきましても引き続きこのスローガンに沿い、お示ししたマニフェストの実現に向け、全力で町政運営に努めてまいります。
議員各位におかれましても、高邁な見識のもと、「豊かで勢いのあるまち」に「心を魅了する要素」を加えた新たな吉田町の実現のため、ご理解ご協力賜りますようお願い申し上げ、所信表明といたします。