2011年12月2日 作成

平成23年第4回吉田町議会定例会(平成23年12月2日開会)町長の行政報告

 平成23年第4回吉田町議会定例会の開会に当たり、町政運営の概況等につきまして、ご報告申し上げます。
 本年3月11日の東日本大震災から、9か月が経過しようとしておりますが、被災地では未だ復旧のめどが立っていない状況であります。特に津波被害による福島第1原子力発電所の放射能漏れ事故は、被災地だけではなく、私たちの日常生活にも影響を及ぼすとともに、農業、製造業をはじめとする日本の経済活動そのものにも甚大な影響を及ぼしております。特に原子力災害につきましては、その影響を受ける範囲が広大であるとともに、国は国策として、原子力エネルギー政策を推進してきたわけでございますので、今回の福島第1原発の事故は、国の責任において、事故の対応、損害の補償、そして災害の対策を講じていただき、1日も早い、被災地の復興、そして日本経済が復興することを、切に願っております。また、現在、国の原子力施設等防災専門部会防災指針検討ワーキンググループにおきましては、福島第1原発の放射能漏れ事故を教訓に、緊急時防護措置を準備する区域、いわゆるUPZを30キロ圏域に設定する方向の考え方が示されたところですが、当町は浜岡原子力発電所から30キロ圏内に位置することから、このUPZの区域に含まれるものでございます。
 しかしながら、現時点では、万が一、原子力災害が発生した場合の防護措置は勿論のこと、基準となる数値、具体的な措置及び対応策等が全く示されていない状況であります。私は、原子力発電は、日本経済を支えるエネルギー需要を満たすための過渡的なものであり、直ちに人類にとって将来につながる、より安全な代替エネルギーの開発を進めるべきであるという考えのもと、将来的には原子力発電をゼロにすべきであると申し上げてまいりました。そして、特に浜岡原発につきましては、東海地震の震源域となる可能性の高いところに立地されており、町民の安全、安心を最優先に考えたとき、町民の生命、財産を守るためには、浜岡原発は「廃炉にすべき」ということを申し上げてまいりました。原子力発電は、国策として進めてきている以上、原子力災害のリスクは当然のことながら、国の責任において行うとともに、原子力発電の安全性の確保、そして、万一災害が発生した場合の措置、対策等は、すべて国の責務において行うべきであると考えております。このことは、今回の福島第1原発の事故を見て分かる通り、各地方公共団体における小手先の対策では、遅々として進展しないことは、明白でございます。私は、原子力災害対策は、国の責務において実施すべきであるとの認識の下、特に浜岡原発については、「1日も早く廃炉にすべき」ことを、今後も国、県をはじめ関係機関に対して、申し上げていく所存でおりますので、町民の皆様をはじめ、議員各位におかれましても、ご理解、ご協力をお願い申し上げます。
 それでは、今年度における事業の進捗状況等につきまして、ご報告申し上げます。
 まず、津波防災対策につきまして、ご報告申し上げます。
 当町では、津波防災対策を最重点施策に位置付け、「津波防災まちづくり」の強力な推進を図っているところでございまして、6月の吉田町議会定例会において補正予算の承認をいただきました津波ハザードマップ作成及び津波避難計画策定事業のいずれも、順調に事業が進んでいるところでございます。効率的かつ効果的な津波防災対策を講じていく上で、基礎データとなります津波ハザードマップは、他の自治体に先駆けまして、既に完成し、今月6日に隣組を通じて、町民の皆様にお届けする予定でおります。
 この津波ハザードマップは、現時点で考えられる最悪の状況を想定したシミュレーションに基づいて作成しております。そのため、これまでの第三次被害想定ではほとんどなかった浸水区域が拡大しておりますが、この津波ハザードマップを被害想定基準とすることで、「どこに、どのような対策を講じれば、町民の生命、財産が守れるか」ということを具体的にイメージして効果的な津波防災対策を講じることができますので、大変貴重な資料を手にした訳でございます。町の津波被害想定が出来上がりました今日を境に、これからは「その対策」へと重点が移行していくわけですが、町民の皆様の生命、財産を守るためには、あらゆる効果的な手段を講じていかなければなりません。
 今後は、津波避難計画を策定し、各地域における避難場所及び避難方法等を町民の皆様と検討していくとともに、国、県をはじめ様々な関係機関を通じまして、津波防災対策のソフト事業、ハード事業を一体的に捉えた対策を講じてまいりますので、今後とも、引き続きご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。
 次に、富士山静岡空港を活用した交流促進事業につきまして、ご報告申し上げます。
去る10月19日から21日までの3日間の日程で、福岡県八女市から橋爪隆幸副市長をはじめ、商工会議所、商工会、観光協会、農業協同組合、観光ボランティアガイドの会及び市観光振興課から総勢10人をお招きし、モニターツアーを実施いたしました。
 今回のモニターツアーは、昨年度から進めている交流促進事業の一環で、観光施策を探求している他県の人の目から当町を見ていただき、地元の人では気付かない地域資源や観光資源を発掘するとともに、今後の地域間交流の推進を目的として行ったものでございます。
八女市の皆様には、小山城、吉田公園といった観光施設の見学、うなぎの選別作業、漁港、しらす加工場での産業体験に加えまして、富士山5合目周辺の散策を体験していただきましたが、それぞれの体験場所におきまして、「吉田の魅力創造委員会」のメンバーの皆様が主体的に関わりを持っていただきました。
 そして、最終日には、主催者側に「吉田の魅力創造委員会」の方々にもご参加いただき、モニターツアー参加者と意見交換会を行いました。この意見交換会では、八女市の方から忌憚のないご意見を伺うことができ、今後の吉田町の観光施策の課題などを明確にしていただいたと感じております。
 今回のモニターツアーで得られました課題や問題点などの成果を、平成24年度に策定を予定しております交流事業計画づくりなどに生かしてまいります。
次に、地域支え合い体制づくり事業につきまして、ご報告申し上げます。
 町では、地域における要援護高齢者等への支援を目的として、行政、民生委員、地域包括支援センターとの協働により、地域が一体となって、要援護高齢者等を日常的に支え合う体制づくりの構築を目指し、要援護高齢者等福祉システムの導入を進めているところでございます。
 このシステムは、地域における要援護高齢者等の世帯の状況、緊急連絡先、相談の履歴、福祉サービスの利用状況など、その要援護高齢者個人に関する情報を、電子住宅地図に反映させることによりまして、地域における見守り支援や要介護高齢者等に必要な各種福祉サービスを円滑に提供することが可能になるものでございます。さらに、今回、町の津波防災対策の基礎データとして作成されました「吉田町津波ハザードマップ」にも関連を持たせることによりまして、津波防災対策の視点を踏まえました「要援護高齢者マップ」を製作する予定でございます。
 現在の進捗状況といたしましては、要援護高齢者の所在データと様々な福祉情報との照合作業を行っているところでございまして、この照合作業が終了次第、「津波ハザードマップ」の情報と関連させまして、平成23年度末までには、システムを稼働させる運びとなっております。
 今後も「地域で支えあい高齢者がいきいきと活動し安心して生活できるまち」を目指して、様々な施策を展開してまいります。
 次に、教育関連事業につきまして、ご報告申し上げます。
 まず、町の将来を担う子どもたちの学力向上に向けた教育環境の整備でございます。学校での生活環境整備としまして吉田中学校の屋内運動場のトイレ改修を行ってまいりましたが、このほど完成し、10月6日から供用開始をしております。清潔で明るく快適なトイレに改修され、子どもたちからも好評をいただいております。
今後も、引き続き、子どもたちの学力向上に向けた教育環境の充実を図ってまいります。
 次に、吉田中学校第2グラウンドの夜間利用の状況につきまして、ご報告申し上げます。
 町民の皆様の健康づくりの一助として、夜間でも明るく安全な場所で、安心してウオーキングやランニングなどの運動をしていただけるよう、6月から吉田中学校第2グラウンドに設置を進めておりましたナイター設備の工事が完了し、9月から利用していただいております。現在、ウオーキングやランニングなど誰でも気軽に運動ができる場として、たいへん多くの方に利用していただいております。また、子ども連れのご家族での利用も多く見られ、スポーツの推進のみならず親子のふれあいの場にもなっております。利用者からは「夜間に道路を走っていたころは、薄暗く危険であったが、第2グラウンドは照明やコースが整備され、安心して走れる。」という声をいただいており、今後も町民の皆様に安心して気軽に運動ができる場所として、より多くの方に、ご利用いただきたいと思っております。
 次に、図書館事業につきまして、ご報告申し上げます。
 11月29日から12月2日までの4日間、文部科学省と愛知県教育委員会の主催により、平成23年度東海・北陸地区図書館地区別研修が愛知県図書館で開催されております。
 この研修会は、図書館員の資質の向上、中堅クラスの司書を対象とした図書館に関する最新のテーマや図書館業務の専門的知識や技術の習得を目的として、毎年全国を6つのブロックに分けて開催されておりますが、今回、この研修会に、当町職員が講師として派遣依頼をいただきまして「地域の拠点としての図書館」と題した事例発表・パネルディスカッションを行いました。
 図書館の開館以来、続けてまいりました学校司書派遣事業や学校図書館の蔵書の充実、データベース化等の施設の整備、さらには、子どもたちの読書活動や調べ学習を支援するためのネットワークづくりなど、図書館での取り組みを発表し、関係者から非常に高い評価をいただきました。そして、ここ数日の間だけでも、全国の図書館から視察の問い合わせが、数件来ている状況でございます。
 次に、昨年度から実施しております施設配送貸出サービスでございます。事業開始当初は、町内の2箇所の介護福祉施設への配送貸出を行ってまいりましたが、本年度からは4つの保育園、中央児童館、子育て支援センター、自彊小学校と合わせて9つの施設への配送貸出サービスを行っております。
 各施設からは、大変喜んでいる様子が伝えられておりまして、職員が地域に出かけていくことにより、読んでみたい図書の要望や図書館に対する意見を直接いただきながら、より身近な図書館として事業展開を図っております。
 今後も、引き続き、職員研修を積極的に行い、図書館が、町の「知の拠点」となれるよう努めてまいります。
 次に、国民健康保険事業につきまして、ご報告申し上げます。
 平成20年度から義務付けられました特定健康診査につきましては、これまで平日に限って集団健診の実施をしてまいりましたが、今年度からは、土曜日健診の実施や個別健診の実施機関の拡大を図ってまいりました。これによりまして、以前に比べて受診しやすい環境となりましたことから、徐々に受診者の増加がみられ受診率の向上につながっております。また、特定健康診査同様に国民健康保険事業の一つとして、人間ドックの受診費助成事業がございますが、年々、人間ドックの利用者は増加傾向にありますことから、今年度は人間ドックの委託先をこれまでの3か所から7か所へと拡大してまいりました。その結果、昨年の同時期よりも30人ほど増加している状況でございます。
 これら事業を実施する上で、町民の皆さんが受診しやすい環境を整備することによりまして、生活習慣病の予防や早期からの健康づくりを進めることができ、これからの医療費の抑制につながるものと考えております。
今後、医療制度改革により、国民健康保険制度を取り巻く環境が変化していく中、今後も引き続き、被保険者の健康増進と、健全な国保財政の維持に努めてまいります。
 次に、幹線道路及び生活道路、河川改修等の土木整備事業につきまして、ご報告申し上げます。
はじめに、幹線道路の整備でございますが、社会資本整備総合交付金事業で進めております榛南幹線の町施工区間である新田工区につきましては、本年度も引き続き用地買収及び物件補償を進めており、予定しております17人の地権者の皆様のうち10人の方々から同意をいただき、10月に契約の締結をいたしました。残りの地権者の方々につきましては、年度末までには、契約を締結させていただき、事業区間のすべての用地取得及び物件補償を完了する予定でございます。また、幹線道路内に排水路を設置する工事につきましては、すでに、10月に工事の発注を済ませ、来年3月の完成に向けて整備を進めている状況でございます。
 そのほかの幹線道路の工事発注状況は、東名川尻幹線を9月、大幡川幹線を10月に発注を済ませ、それぞれの工事も着手し順調に進んでいるところでございます。なお、東名川尻幹線の施工箇所が、主に高畑高島線との交差点部に位置しておりますので、車両通行等には十分配慮しながら工事を進めてまいります。中央幹線につきましては、東名川尻幹線との交差点部の用地取得に向けて地権者の方と協議を進めているところでございますが、1月に契約を締結させていただく予定でございます。
 次に、生活道路の整備でございますが、静岡空港隣接地域振興事業で整備を進めております愛宕前2号線道路改良工事につきましては、9月末に工事の発注を済ませ、進捗状況といたしましては、年末までに工程の約30パーセントの整備を行う計画で、来年3月の完成供用開始に向けて進めております。また、西の坪大浜5号線及び亀の尻線でございますが、まず、西の坪大浜5号線につきましては、年度の途中からではございますが、県費補助事業の採択を受けることができ、現在、残りの地権者の方と協議をさせていただいているところでございます。一方、亀の尻線につきましては、5人の地権者の方と協議中ではございますが、地権者全員の方々から内諾をいただいておりますことから、1月には契約を締結させていただく予定でございます。
 次に、平成22年度の繰越事業であります「きめ細かな交付金事業」の大幡川幹線改良事業でございますが、川尻小山地区内の大幡川尻2号線との交差点から南側へ向かい、高畑高島線との交差点付近までの延長約100メートル、幅員約8.6メートルの舗装修繕工事を今月中旬に発注する予定でございます。
 次に、河川改修事業でございますが、片岡地区の準用河川大窪川の改修工事につきましては、農業用水の必要な時期も終わり、渇水時期に入った10月末に工事の発注を済ませ、来年3月の完成に向けて工事を進めているところでございます。
 続きまして、橋梁の長寿命化修繕計画策定に伴う総合評価委員会委員派遣業務委託及び東名高速道路を跨ぐ跨道橋につきまして、ご報告申し上げます。
 国の交付金事業として、本年8月に発注した橋梁の長寿命化の基本方針の策定及び個々の橋梁修繕計画等を行う「吉田町橋梁長寿命化修繕計画策定業務委託」でございますが、長寿命化の基本方針や橋梁修繕計画等に対し、学識経験者のご意見を伺うための「吉田町橋梁長寿命化修繕計画策定総合評価委員会委員派遣業務委託」を10月に発注いたしました。この策定総合評価委員会は、本年度2回開催する予定で、委員会において委員となる学識経験者の意見聴取を経まして、吉田町橋梁長寿命化修繕計画が作成されることとなります。また、東名高速道路を跨ぐ橋梁につきましては、本年6月に神戸前玉橋と中原橋の補修工事の業務委託契約を締結したところでございますが、先般11月初旬に、委託契約先の職員とともに、断面修復前の現場確認を行った結果、新たな異常がないことを確認しておりますので、現在、来年3月の補修完了に向け工事を進めております。
 次に、公共下水道の整備につきまして、ご報告申し上げます。
 現在における整備状況は、340ヘクタールの事業認可区域のうち、昨年度末までに232.59ヘクタールの整備を完了し、整備率が68.4パーセントに達しております。また、本年10月末時点での下水道への加入戸数は、2,537戸加入いただいており、1日当たりの平均汚水処理量は、約2,166立方メートル処理しております。
 本年度は、住吉地区では榛南幹線と東村地区を、川尻地区では西向地区を中心に、管延長にして1.6キロメートルの布設工事を行います。また本年3月に片岡地区の41ヘクタールを事業認可区域に加えた地域の一部について、実施設計を行い、来年度以降工事に着手する予定でございます。
 次に、上水道事業の整備につきまして、ご報告申し上げます。
 町では、安全で安定した水の供給のため、老朽管の布設替え、施設の整備、他事業に伴う水道管の布設及び布設替事業を実施しております。
まず、老朽管布設替事業のうち本年度の石綿管布設替工事につきましては、坂部やまばと学園北側の坂部5号線外1路線配水管布設替工事を2工区に分け、第1工区を8月に、第2工区を9月にそれぞれ発注を済ませております。また石綿管以外の布設替工事としまして、牧之原市円成寺南側の細江37号線外1路線配水管布設替工事が10月に完成をしております。
 次に、施設の整備に関する事業としまして、第3配水場進入路新設工事及び第5水源電気室新設工事がございます。第3配水場進入路新設工事につきましては、8月に工事の発注を済ませ、第5水源電気室新設工事につきましては、9月に発注を済ませ、いずれも順調に進んでおります。
 次に、他事業に伴う水道管の布設及び布設替え事業でございますが、道路改良事業関連工事及び公共下水道事業関連工事による事業がございますが、本年度は10本の工事があり、すべて発注を済ませており、既に3本の工事が完成をしております。
 以上、町政運営の一端を申し上げましたが、国政におきましては、東日本大震災の復興と福島第一原発事故の収束、さらに円高によるデフレ対策、TPPへの参加交渉など、非常に重い課題を背負いながら、大変難しい舵取りをしていかなければなりません。
 このような厳しい社会経済情勢の中、当町では、目下、平成24年度当初予算編成に当たっておりますが、依然として厳しい財政状況であります。
 しかしながら、その厳しい財政状況の中でも、わが町の運営は、町民の皆様に信頼される行財政運営であることはもちろんのこと、町民の皆様が安心して生活ができ、また安定した企業活動を確保するため、当面津波防災まちづくりを最優先施策と位置付けました行政運営を行っていく所存でおります。
 町民の皆様が安心して生活ができる町を築いてこそまちの発展があると考えておりますので、議員におかれましても、一層のご支援を賜りますようお願い申し上げ、本定例会の行政報告といたします。