2007年6月5日 作成

平成19年第2回吉田町議会定例会(平成19年6月5日開会) 所信表明

 本年4月22日の吉田町長選挙で再選を果たして以来、最初の議会定例会となりますので、本定例会の開会に臨み、今後4年間の町政運営を展望し、私の所信の一端を申し述べさせていただきます。
 平成19年第2回議会臨時会の挨拶の中でも申し上げましたが、選挙では、10,323人の皆様方からご支持を賜りました。この結果を目の当たりにし、私が、これまでの4年間で進めてまいりました「町民の皆様方と同じ目線に立っての町政運営」が皆様方に受け入れられ、さらに継続するよう叱咤激励してくださっているものと意を強くいたしました。そして、当町には、旧来の悪癖などに流されず、時代に応じた新たな価値観と表現力を身に付けられた方が急増していることを実感し、大変心強く思うとともに、引き続き、個々の価値観が町の運営に正しく発揮される透明感のある町にする努力を怠ってはならないと自分に言い聞かせた次第であります。
 平成19年4月28日に発刊された静岡新聞の5面に、金大中前韓国大統領の日本観が掲載されておりました。金大中氏は、自他共に認める親日家ですが、インタビューに対する回答の中で、「日本の考え方や政治は結局“義理”。義理で行動するのは民主主義ではない。民主主義は“是非”。韓国儒教の大義名分の根本は是非。日本は主君に忠誠を誓い、どんなことがあっても固守する義理。それは民主主義と合わない。大それたことを言って申し訳ないが、“義理”中心から“是非”中心に変わるか。それが、日本がさらに大きく育つかどうかの分かれ目だと思う。」と言っていました。私は、大変冷静な見方だと感心いたしました。
まちづくりを進める上で、町民の皆様方の判断が、“義理”中心ではなく、“是非”中心となれば、私的な価値判断は淘汰され、公の利益を尊重した施策決定が容易になります。そうなれば、施策決定の段階で、是非論が戦わされ、何が悪くて、何が正しいのかがみんなに理解される透明感のある社会が築かれるはずです。そして、コンプライアンス意識が高まり、町民の皆様方の「社会正義」に対する感覚も研ぎ澄まされ、社会秩序を危うくするような不適切な行動を行う人もなくなるでしょう。
とりわけ、今回の統一地方選挙で見られたような、「人格が高潔で、政治と選挙に関して公正な識見を有する人である」として議会で選挙され、個人的な主張を捨て、公正な選挙が行われるように率先垂範し、民主政治の健全な発達を実現するという極めて重要な使命を果たすことを誓ってその職に就任したはずの選挙管理委員会の委員の一人が、統一地方選挙執行を目前に控えた時期に急遽辞任し、退職した翌日から特定の立候補予定者のために際立った活動を始めるような行動や、商工会法を根拠として町の商工業の総合的な改善発達を図るために組織されている商工会が、「特定の個人や団体の利益を目的とする事業や特定の政党のための利用」を禁じている法律に反するのではないかと疑いたくなるような紛らわしい行動は、二度と起らないものと確信しております。
高度情報化社会は、人々の価値判断基準をグローバル化しました。理屈に合わないローカルな価値判断基準は淘汰され、人々の価値観は平準化しつつあります。まちづくりも、そうしたグローバルな価値観に基づいて、町民の皆様方すべてを対象として公平に行わなければならないことは言うまでもないことであります。
 私は、町長に就任して以来、談合防止策を具体的に実施し、さらに、行政が保有する情報を積極的に開示することなどによって町政運営の透明性を向上させる一方、事務事業のゼロベース検証を進め、行政改革大綱や集中改革プランなど柱となる体質改善のための計画を定めて行財政構造改革を推進しながら、日曜開庁、子育て支援策の充実、健康づくりメニューの充実などソフト面における行政サービスの向上に努めるとともに、学校の体育館や保育園園舎の建て替え、放課後児童クラブ室の建設、陸閘の電動化のための津波防災ステーションの建設、上下水道施設や道路網といった社会資本の整備を計画的かつ積極的に進め、“みんなが住みたくなるまち”をつくることを目指して鋭意努力してまいりました。
 そして、今回、町長選挙に臨むに当たり、5つの柱から成るマニュフェストを掲げ、この恵まれた吉田町をさらに裕福にし、“誰もが住んで良かった”と実感できる町にすることをお約束いたしました。
町民の皆様方にお約束いたしました5つの柱の1点目は、「福祉社会の建設」であります。まず、「産みやすく育てやすい環境の整備」でありますが、平成20年度には中学3年生までの医療費を完全に無料化するとともに、学童保育の保育時間を延長するほか、平成21年度に保育対象を小学4年生までに拡大することをお約束いたしました。さらに、平成20年度までに、さゆり保育園園舎の建て替えを実施することもお約束いたしました。次に、「健康を維持しやすく、社会に参加しやすい環境整備」といたしまして、平成19年度以降、中高年者のための若返り貯筋塾、親子のためのオリジナルダンス塾、一般男女のためのSUNDAY・スポーツ塾を実施することを掲げ、老若男女の別を問わずに楽しみながら健康づくりを学べる機会を提供することをお約束いたしました。また、高齢者の皆様方の病気予防の新たな施策として、肺炎球菌ワクチン接種費を助成することを打ち出しました。そして、「打ち明けやすく、周囲が手を差し伸べやすい環境整備」といたしましては、障害者自立支援法に基づき策定した吉田町障害者計画及び障害福祉計画の理念に沿って障害を持った方の社会生活への適応訓練、自立訓練、就労訓練のための中核的施設として障害者自立支援施設を建設することをお約束いたしました。
5つの柱の2点目は、「教育環境の整備」であります。具体的な施策として掲げましたのは、平成20年度までに6,500万円規模の奨学金制度を創設することと、平成21年度までに小さな理科館を建設することであります。奨学金制度につきましては、現在、経済的理由により就学が困難な方に対して奨学金を交付する制度がありますが、この制度は、返還の義務のないものであり、循環できる制度とはなっておりません。このため、間断なく安定した人づくり支援制度とするため、貸与制の新たな奨学金制度に改めることを提唱いたしました。
5つの柱の3点目は、「都市・防災基盤の整備」であります。近年、宅地化の進展は著しく、自然の保水力が低下している当町の実態に鑑み、河川改修や排水ポンプの設置を促進し、安全安心な生活基盤づくりに取り組むことをお約束いたしました。
 5つの柱の4点目は、「企業誘致の積極的促進」であります。全国的に人口減少社会を迎える中にあって、当町は、例外的に人口増加を続けており、企業進出も絶えないという嬉しい状況にありますが、今後さらに、現在保有している町有地への企業誘致を進めるほか、開発可能地域への企業誘致を進め、町民の皆様方の働く場所を創出するとともに、税収の大幅な増加を実現させ、町民の皆様方に、より質の高い行政サービスを提供できる基盤を強固にしてまいりたいと思っております。
 5つの柱の5点目は、「財政健全化」です。昨年度、県下で最も高い比率であることが報じられた実質公債費比率を平成22年度までに17パーセント台に圧縮することを掲げ、これを達成するために、平成19年度内に、中山三星建材株式会社工場跡地を売却することと、地方債の新規発行額の抑制や既往債務の繰上げ償還を行うことをお約束いたしました。
 このマニュフェストに掲げました事業の多くは、県内の他の市町では財政的な問題から実施することができないのではないかと思えるものがほとんどであり、達成すれば、当町独自の特化した行政サービスなどとして、羨望の的になるものと思っております。このマニュフェストに掲げました事項は、過去4年間の町政運営をベースとした戦略的かつ実践的なものであり、また、当町の財政等の実情に裏打ちされたものでありますので、十分に達成可能なものであると確信しております。当町は、これらの施策を確実に達成できる状況にありますので、マニュフェストに掲げない他の必要欠くべからざる事業も順調に達成されることは言うに及ばないことであります。
 それでは、こうした考え方に基づいて運営を継続している町政の平成19年度の取り組みについて、その概要を申し上げます。
 まず、マニュフェストに掲げました「福祉社会の建設の中の産みやすく育てやすい環境の整備」に関連した事業についてでありますが、平成19年度は、小学6年生までの医療費完全無料化の助成制度を確立し、既に4月1日からこの制度の運用を開始いたしましたので、次には、中学3年生までの医療費完全無料化に向けて制度づくりを進めてまいります。また、学童保育事業についてでありますが、平成19年度は、自彊小学校敷地内に放課後児童クラブ室の建設を予定しており、5月30日に建設工事に着手し、8月中に完成させるように事業を進めております。自彊小学校敷地内への放課後児童クラブ室の建設が終わりますと、各小学校区の全てに町所有の施設が整うことになりますので、この制度をさらに利用しやすい制度とするため、平成19年度中に、保護者の迎えの時間を保育園と同じ午後6時30分まで延長するほか、年末年始と春休みの保育日数の見直しを行い、学童保育事業の質的充実を図ってまいります。さらに、入所児童の対象範囲の拡大に係る課題や問題などを調査するため、一部の施設で小学4年生までの受け入れを試行的に実施し、平成21年度には、小学4年生までの児童の受け入れを完全な形で実施できるように準備を進めてまいります。また、老朽化しているさゆり保育園の園舎の改築につきましては、平成19年度内に事業着手し、2か年の継続事業として平成20年度に完成させるように準備を進めております。
次に、「健康を維持しやすく、社会に参加しやすい環境整備」に関連する事業でありますが、中高年者のための若返り事業につきましては、生活習慣病の予防を意識しながら筋肉トレーニングを通して若返りを図ろうとするコンセプトで展開したいと思っており、目下、大学との連携をはじめとする全体の調整を行っております。また、オリジナルダンスを通しての健康づくり事業ですが、本年度中は、老若男女を問わず誰もが楽しく踊れる新しい町のオリジナル曲とダンスの創作に取り組んでおりますので、町民の皆様方には、その曲に乗ってダンスを躍り、心身ともに開放感を味わいながら健康になっていただきたいと考えております。さらに、本年度から、体育指導委員、吉田町ダンス健康づくり推進委員会委員、スポーツ少年団の指導者の皆様方などに、いろいろな種類のスポーツのインストラクター資格を取得していただくように呼び掛け、町のスポーツ教室の質と量の両面の充実を図り、町民の皆様方が利用しやすい環境を整備してまいります。一方、70歳以上の方々の健康維持を支援するための肺炎球菌ワクチン接種費助成事業につきましては、9月頃の制度運用開始に向けて準備を進めております。目下、実務面の検証を多角的に行っており、医師会や医療機関とも調整しながら、ほぼ自己負担が生じない助成制度にする方向で制度設計を行っているところであります。そして、「打ち明けやすく、周囲が手を差し伸べやすい環境整備」の事業として建設を予定しております障害者自立支援施設でありますが、既に、基礎調査に着手しており、平成19年度中に、関係する専門委員会のご意見もお伺いしながら基本構想を作り上げたいと考えております。
続きまして、マニュフェストに掲げました「教育環境の整備」に関連する事業について申し上げます。
「まちづくりは人づくり」とよく言われます。私は、いろいろな才能を秘めてこれから育とうとしている子ども達が、自分の才能を知り、伸び伸びと元気に学習できる環境を整えることが、町の将来を明るくすることにつながると信じております。しかし、子ども達の中には、経済的に恵まれない家庭の子もおりますので、その子ども達の経済的な障害を軽減し、学習意欲を満たすことができる継続性のある支援体制を整える必要があります。このため、これまで積み立ててまいりました教育振興基金を利用して、貸与制の新たな奨学金制度を創設するように準備を進めております。次に、「ちいさな理科館」建設でありますが、この事業につきましても、将来を担ってもらう子ども達の学習機会を増やし、自己開発の一助にしてもらおうとする人づくり事業の一環です。現代の子ども達は、実験や観察などに対しては興味を示しますが、科学的な考察は苦手とされ、「理科離れ」の傾向にあります。これは、テレビゲームなどの刺激的で、非現実的な空間を目の当たりにする機会が多く、実体験による感動と、それに基づく自然現象に対する探究心が不足していることが大きな要因ではないかと考えます。このような子ども達の探究心を刺激するような実験の場を提供し、自然科学に対する興味を喚起することを目的として、「ちいさな理科館」の建設を考えたわけでありますが、平成19年度は、基礎調査や基本構想の策定などが主な事業となり、平成21年度の建設に向けて着実に準備を進めてまいります。また、読書に関するものですが、過日、喜ばしい出来事がもたらされました。平成19年4月23日、東京で開催されました「子どもの読書活動推進フォーラム」において、読書の成果がいろいろな教科で生かされている点が高く評価され、中央小学校が読書活動優秀実践校として文部科学大臣表彰を受賞したということであります。読書は、子どもが言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かにする上で欠くことのできないものであります。子ども達のさらなる読書活動支援のため、6月中に町内4小中学校の図書室に空調設備を完備し、子ども達が読書に没頭しやすい環境を整えるようにいたします。
 続きまして、マニュフェストに掲げました「都市・防災基盤整備」に関連した事業について申し上げます。
 まず、河川整備でありますが、平成19年度には、下流部から国道150号まで改修が完了し事業を休止しておりました大窪川の河川改修事業を再開することといたしました。平成19年度の工事は、国道150号から上流に延長50メートルの区間を改修する予定にしており、引き続き、毎年度上流に向かって計画的に工事を進めたいと考えております。今後も急速に開発が進むことが予想される当町にとりましては、安全安心な生活基盤を築くため、河川整備が喫緊の課題となりますので、自主事業にとどまらず、湯日川や坂口谷川の整備に関する県への要望活動も並行して行ってまいりたいと考えております。
 また、もう一つの安全安心な生活基盤を築くための主要事業である吉田漁港津波防災ステーションの整備についてでありますが、この事業は、国と県の補助を受け、平成17年度から津波・高潮危機管理対策緊急事業として進めており、平成18年度までに、一定以上の地震動を感知した場合、第1・第2・第4・第6陸閘が自動的に閉鎖するまでの工事を完了いたしましたので、平成19年度には、当システムの親局となる津波防災ステーションの遠隔操作システム詳細設計業務委託、被制御所からステーション親局となる役場までの光ケーブル敷設工事、大幡川水門の遠隔操作を行うための改良工事、現場設備工事などを予定しており、平成21年度完成を目指しております。
 続きまして、道路網の整備への取り組みについて申し上げます。
 まず、町の基幹道路として整備を進めております都市計画道路榛南幹線、東名川尻幹線、大幡川幹線についてでありますが、榛南幹線につきましては、住吉幹線から海岸幹線までの980メートル区間について、静岡県が620メートル、町が360メートルと事業区間を定め、同時に整備を進めており、現在、どちらの区間も用地取得を進めております。なお、海岸幹線から牧之原市に向けては、静岡県で整備いたしますが、平成19年度から地元説明会を開催し、事業着手する予定になっているということであります。次に、東名川尻幹線でありますが、町道高畑高島線から国道150号までの間の工事を進めてまいります。そして、大幡川幹線につきましては、川尻地内の横手橋から南側の用地取得等を行ってまいります。また、静岡県が事業主体となり整備を進めております都市計画道路榛南幹線、主要地方道島田吉田線バイパスとしての東名川尻幹線、主要地方道吉田大東線の歩道新設等の事業につきましては、早期完成を目指して予算確保されるよう今後とも強く要望してまいりたいと考えております。
続きまして、志太榛原農林事務所が事業主体となって整備を進めております広域営農団地農道でありますが、平成19年度には、平成18年度に測量が完了した町道向原3号線から県道住吉金谷線までの用地買収を行う予定となっております。町では、この農道の青柳公園東側の町道向原線から県道住吉金谷線までの間に、農林事務所が整備する車道と一体的に歩道を設置する計画を進めており、農業基盤整備と合わせて生活基盤の向上を図るように努めてまいります。
 次に、生活に欠かせない都市基盤である上水道と下水道について申し上げますが、平成19年度の上水道事業は、第6期拡張事業として実施しております除鉄除マンガン施設と第2浄水場の築造を進めることが主要なものであり、除鉄除マンガン施設につきましては、既設構造物の取り壊しから管理棟及び水道資材倉庫等の築造、既設管の移設及び配管工事等を予定しており、第2浄水場につきましては、配水池の築造とタンク廻りの配管等の工事を実施するように準備を進めております。また、下水道事業につきましては、町道日の出町片岡辻線に幹線管渠の整備を進めるほか、管延長合計4.2キロメートルの面整備を進める予定でおります。
 続きまして、マニュフェストに掲げました「企業誘致と財政健全化」への取り組みについて申し上げます。
まず、中山三星建材株式会社工場跡地への企業誘致でありますが、現在、売却先を公募するための売買条件設定を行っているところであり、同時に、不動産鑑定や測量も実施するように準備を進めております。こうしている間にも、この土地に興味を示し、お問い合わせをいただいている企業もありますので、今後、できる限り好条件で売却できるように交渉を進め、平成19年度内に契約相手を決定したいと思います。この土地の売却益をもって起債の繰上償還を実現できれば、当町の実質公債費比率は、目に見えて下がってまいりますし、義務的経費に充当する財源も減り、一層弾力的な財政運営が可能となることは間違いないことでありますので、マニュフェストに掲げましたとおり目標を達成するように努力してまいります。現状でも、当町は、平成19年度当初予算において、自主財源が歳入総額の77.7パーセントを占める非常に恵まれた財政運営を行える状況にあります。また、行財政構造改革を強力に推し進めながら工夫を凝らした財政運営に努めていることから、県下でも突出したサービスを提供できる自治体になっております。そうした状況に加え、当町には複数の企業の進出が予定されておりますし、さらに、中山三星建材株式会社工場跡地への企業誘致が実現いたしますと、より一層町民の皆様方の満足度を向上させる独創的な行政運営を行えるものと確信しております。是非、議員各位も、当町の実力を冷静な目で観察していただき、町民の幸福につながるご提言をいただきますとともに、施策の決定を行っていただきたいと思います。
 続きまして、マニュフェスト以外で、特に課題を持って取り組もうとしている事業について申し上げますが、平成19年度には、将来につながるまちづくりに関する2つの計画を策定いたします。その1つは、町における土地利用に関する行政の指針となる第2次吉田町国土利用計画であります。これまで、基礎調査、土地利用の分析、目標値の設定などを行い、県の国土利用計画を基本とし、民間の開発動向、土地が有する自然的、社会的な条件などを様々な角度から分析し、検討を加えて計画素案を作成いたしましたので、今後、さらに検討を重ね、開発審議会での審議や県との協議など必要な手続きを経て、12月の議会定例会に議案として上程できるように事務を進めてまいります。2つ目は、都市計画マスタープランでありますが、この計画は、健全な土地利用を促進するために策定するものであり、これまで、地域の皆様方に参画していただきながら調査活動を実施いたしましたので、平成19年度には、それらを踏まえて、地域別構想や全体構想をまとめ、都市計画マスタープラン地域別会議の代表者や有識者の方々にも参画していただきながら検討を重ね、計画を完成させてまいります。静岡空港の開港を間近にしている今日、当町の土地の流動性も高まるものと考えており、今回策定する計画は、性急で悪質な土地開発から町民の皆様方を守ってくれるものと思っておりますので、十分に議論を尽くしてまいりたいと存じます。また一方では、航空機騒音対策に係る対応も着実に進めなければならないものと考えております。
 次に、入札をはじめとする契約制度全般の見直しに関する取り組みについて申し上げます。
現在でも、公的な機関が発注する入札に関し、入札妨害等で摘発される事件が後を絶たない状況にあります。これに対し、国の機関や多くの地方自治体では、指名競争入札の対象工事を抑制し、一般競争入札の対象工事を拡大するとともに、価格競争一辺倒から、多様な要素を設定しながら総合的に評価して業者を決定する評価方式を取り入れることなどを打ち出しております。
当町では、平成15年度から、独自で制度化した抽選型指名競争入札を導入し、官製談合のみならず業者間の談合も行われない透明感のある入札を執行しており、町民の皆様方の信任も得ていると実感しておりますが、今後さらに、公正で、透明感のある業者決定の仕組みづくりを行うように努力しなければならないことは言うまでもありません。
私は、町政運営に対し、これまで以上に町民の皆様方に興味を持っていただき、政策の善し悪しを公正かつ公平にご判断いただくためには、入札のみならず、あらゆる契約の過程に高い透明性を持たせることが必要不可欠であると思っております。平成19年4月には、こうした点を強く意識し、契約事務全般を所管する契約管理課を新設いたしました。契約管理課には、2年間で、あらゆる角度から契約制度全般を見直すように命じ、さらには、4月25日に、契約管理課の仕事をサポートする実務的な庁内検討組織として、吉田町契約制度管理委員会も設置いたしました。この委員会は、設置した日から活発に活動を開始しており、入札制度の根幹部分についての構想をまとめつつありますので、早い時点で、この委員会の検討結果を反映した入札方式によって業者選定を行えるのではないかと思っております。そして、今後、公有財産の取得や売却などに関する契約事務についても、全般的に見直しを進め、順次その成果の実用化を図り、町民の皆様方の目線に立った、より公正で、より分かり易い行政運営の実現を目指してまいります。
 当町は、平成15年度以降、地方分権の受け皿のモデルとなるまちづくりを進めてまいりました。そして、それを達成するために、財政基盤の強化と行財政構造改革の推進、行政サービスに対する町民満足度の向上、行政運営の透明度の向上に努力してまいりました。その視点は、「特定の町民の利益」ではなく、常に「すべての町民の利益」に置いてまいりました。その結果、年々財政基盤は強化されております。全国的に提供する行政サービスの質が落ちる傾向にある中で、当町は、ますます質の高い行政サービスを提供できるようになっております。そして、積極的な情報開示の姿勢を貫き通した結果、行政運営に透明感が増したと自負しており、今までと異なる町民の皆様方が行政に関心を持ってくださるようになったと感じております。
吉田町は、今、時代の先端を進んでおります。本年5月、静岡県市町村合併推進本部は、新たに6地区を合併推進構想に追加し、11の地区を合併推進構想に盛り込みましたが、実質公債費比率以外の指標については優良な結果を示している当町は、当然のごとく合併推進構想の中には含まれませんでした。国が果たすべき役割すら極めて不明瞭になっている激動の中にあって、自らの力を十分に発揮する努力もせず、ただ単に、国や県が合併を奨励しているという理由だけで自らの方向を定めるような愚かなことを行ってはならないときであると思っております。今は、静岡県という狭い視野の中で当町の運営を考えるよりも、全国を見渡し、その上で近隣を見詰め、当町の状況を冷静に分析すべきときであります。ここに至って、全国には、合併による負の効果が顕著に出ている自治体も見え始めました。特に、印象に残るのは、大規模な自治体と合併した小規模自治体の荒廃していく姿であります。今、国内には、共同体としての機能が限界に達している限界集落が急増しているといわれております。それらの集落は、やがて消滅集落となるでしょう。また、平成19年3月9日に新聞に掲載された読売新聞の全国世論調査では、合併があった自治体の住民の49パーセントが合併に否定的で、肯定的な回答をした42パーセントを上回っております。そして、住民サービスの評価では、合併後にサービスが良くなったと感じている人は20パーセントに過ぎず、半面悪くなったと回答した人は68パーセントに上っております。国や県の提唱するとおりに合併した結果、住民サービスが低下したり、集落の荒廃を招いたりする例が多いことは否めない事実であります。
今こそ、各地方自治体は、自らの能力を客観的に分析し、置かれている状況も深く考察し、将来も展望して、すべての町民の皆様方の幸せを第一に考えて、方向を決定すべきときであり、ビジョンと経営感覚を持ち、必ずできると固く信じ、なんとしても実現させたいと情熱を傾け、懸命に努力を重ねるリーダーを必要としております。
私は、町政を担当させていただきましたときから、「町の発展」と「すべての町民の皆様方の幸せ」を第一に考え、それを持続させ、また向上させるために全身全霊を傾けてまいりました。そして、それを実現するための担い手である職員のスキルアップを強力に推し進め、組織全体の行政能力を向上させた結果、工夫を凝らした独創的な行政運営も行えるようになってまいりました。そして、町民の皆様方への積極的な情報開示に努め、町民の皆様方の意思に沿った町政運営を実現したいと渇望し、その通りに実践してまいりました。
行政は、町民の皆様方のためにあるものです。
議員各位におかれましても、広く世間を考察され、すべての町民をしっかりと見据え、高邁な見識のもと、「誰もが住みたくなるまち」をつくるためにご協力賜りますようお願い申し上げ、所信表明といたします。